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2021.11.30

自然界で分解される生分解性プラスチック。その問題点とメリット・デメリット

自然界で分解される生分解性プラスチック。その問題点とは?

プラスチックに特殊な素材を混ぜ込むことで生分解性を付与し、微生物の力で自然に分解される性質を持つ「生分解性プラスチック」。土壌や海洋など適切な自然環境下で水と二酸化炭素に完全に分解されることから、地球にやさしい素材として注目されています。しかし、その実用面においては、まだまだ課題も多く残っているようです。今回は、生分解性プラスチックのメリット・デメリットをはじめ、種類や用途などを詳しくご紹介します。

生分解性プラスチックとは?

環境負荷が少ないプラスチックとして注目されている「バイオプラスチック」。バイオプラスチックは、大きく分けると「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」の2種類があります。

そのうち生分解性プラスチックは、微生物の働きによって分子レベルまで分解される性質を持っています。最終的には水と二酸化炭素となるため、自然界へ還っていきます。一方バイオマスプラスチックは、再生可能な生物由来の資源を原料としてつくられたプラスチックのことを指します。

つまり、決められた条件下で分解されるという「機能」に着目したのが生分解性プラスチック、再利用可能な生物資源に由来するという「原料」に着目したのがバイオマスプラスチックです。どちらも環境にやさしいという面では共通していますが、それぞれ違った性質を持つプラスチックなのです。

プラスチックごみが環境に与える影響

プラスチックは、使い勝手のよい素材としてさまざまなものに使用されています。日常生活でもっとも目にする機会が多いのは、レジ袋やペットボトルではないでしょうか。これらは適切に廃棄されればリサイクルにつながりますが、ポイ捨てや不法投棄などによって流出してしまったプラスチックごみは、自然環境に悪影響を与えます。例えば、海洋プラスチック問題はそのひとつで、川から海へプラスチックごみが流出することによる、海の生きものへの影響が懸念されています。それは、巡り巡って、魚を食べる私たち人間にも影響が連鎖すると考えられているのです。

プラスチックごみの海洋流出

プラスチックごみ問題について調べてみると、まず海洋プラスチック問題のことが目に入るでしょう。適切に廃棄されなかったプラスチックごみは、街から川を渡って海まで到達し、海の生きものに影響を与えています。年間約800トンものプラスチックごみが世界中の海に流出しているといわれており、2050年には海洋プラスチックごみの総重量が海洋に生息する魚類の総重量を上回ると予想されています。

プラスチックごみの海洋流出による影響として、海の生きものがエサと間違えてプラスチックごみを誤飲してしまうことがあります。プラスチックごみは消化されないため体内に残り、エサを摂取できず栄養失調になってしまいます。すると、漁獲量が減少したり、生態系のバランスが崩れたりする可能性があります。さらには、美しい景観が損なわれ、観光業への影響が出ることも考えられます。海洋プラスチック問題は、私たちの暮らしに直結していることがわかります。

マイクロプラスチックによる生態系や人体への影響

プラスチックごみは、自然環境にさらされると劣化して小さな粒子となります。特に直径5mm以下になったものをマイクロプラスチックといいます。マイクロプラスチックは、魚介類だけでなく、それらを食べる鳥からも検出されています。つまり、魚介類を食べる私たち人間にも、マイクロプラスチックが蓄積されている危険性があるのです。1週間にクレジットカード1枚分のマイクロプラスチックを摂取している可能性を指摘する研究結果もあり、人体への影響も軽視できない状況です。

生分解性プラスチックのメリット・デメリット

メリット

生分解性プラスチックには、さまざまなメリットがあります。

・適切な環境下で分解されるため、ごみとして蓄積されることがない
・海で分解される生分解性プラスチックであれば、海洋プラスチックごみ問題の対策につながる
・ロゴマーク付きの製品をつくる場合、地球にやさしい企業であることをアピールできる

生分解性プラスチックは、一定の条件下であれば分解される性質を持っているため、プラスチックごみ問題の直接的な解決につながると考えられます。その点で、バイオマスプラスチックは再生可能な資源を素材としてつくられますが、適切に廃棄されないとプラスチックごみ問題の解決にはつながりません。

デメリット

続いて、生分解性プラスチックのデメリットも見ておきましょう。

・通常のプラスチックより価格が高額になる
・使い捨てが前提となってしまう
・すぐに分解されるわけではなく、分解時間がかかる

生分解性プラスチックは、適切な環境下ですぐに分解されるわけではありません。完全に分解されるまでに年月を要するものがあり、状況に左右されることも考えられます。また、使い捨てが前提となるため、ごみを減らす取り組みを表す「3R」のうち、「Reuse(リユース=使えるものは繰り返し使う)」と「Recycle(リサイクル=再資源化)」には適さない取り組みになります。

生分解性プラスチックの種類

現在、さまざまなメーカーによって多種多様な生分解性プラスチックが開発されています。国立研究開発法人 国立環境研究所が運営・管理する環境情報メディア「環境展望台」によると、生分解性プラスチックは、原料や製造方法の観点から大きく微生物産生系・天然物系・化学合成系の3つに分類することができます。

①微生物産生系

植物は、デンプンを貯蔵炭水化物として蓄積します。同じように、微生物は「ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)」と呼ばれるポリエステルを栄養不足時に備えるエネルギーの貯蔵物質として体内に蓄積します。微生物が飢餓状態になると、エネルギーをつくるためにPHAが分解されます。PHAは、ポリエステルのなかでもポリプロピレン(PP)と同程度の高い融点(180度)を持ち、破壊強度もPPに近いといわれています。ただし、破壊伸びは5%以下と硬い材料で、硬質射出成形品をはじめ、フィルムやシートなどの原料として用いられています。

①微生物産生系

植物は、デンプンを貯蔵炭水化物として蓄積します。同じように、微生物は「ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)」と呼ばれるポリエステルを栄養不足時に備えるエネルギーの貯蔵物質として体内に蓄積します。微生物が飢餓状態になると、エネルギーをつくるためにPHAが分解されます。PHAは、ポリエステルのなかでもポリプロピレン(PP)と同程度の高い融点(180度)を持ち、破壊強度もPPに近いといわれています。ただし、破壊伸びは5%以下と硬い材料で、硬質射出成形品をはじめ、フィルムやシートなどの原料として用いられています。

②天然物系

海洋プラスチック問題が重大な題材として取り上げられるなか、海洋生分解性プラスチックはあまり実用化されていませんでした。2020年、大阪大学の研究により、デンプンとセルロースから高強度・高耐水性の海洋生分解性プラスチックが開発されました。デンプンとセルロースという身近なバイオマス資源を組み合わせてつくられたものであること、そして高強度・抗耐水性でありながら海水における高い生分解性が示されたことから、いま注目されている生分解性プラスチックです。

デンプンそのものは安価で入手できる素材ですが、耐水性の課題からプラスチック原料としては積極的に用いられていませんでした。しかし、セルロースを組み合わせ、多糖類同士の強固な相互作用を利用することで耐水性が向上。高強度なプラスチックシートの開発に成功したのです。

③化学合成系

ポリ乳酸(PLA)

植物由来のデンプンや糖を発酵させて得られた乳酸を、化学的に重合させて合成したポリマーを「ポリ乳酸(PLA)」といいます。通常の室温環境下ではほとんど分解されないため、長期間使用することができます。水分と温度が適度な環境下に置くと分解が促進され、最終的には水と二酸化炭素に完全に分解します。

ポリブチレンサクシネート系(PBS)

ポリブチレンサクシネート系(PBS)は、自然界の土中の微生物の力で水と二酸化炭素に自然に分解される生分解性プラスチックです。一般的な生分解性プラスチックのなかでは耐熱性が高い素材です。また、天然繊維との相溶性が高いという特徴もあるため、単体では発揮できない性能を、ほかの素材との複合によって実現することができます。

ポリカプロラクトン

ポリカプロラクトンは、半結晶性や生分解性の特徴を持つ熱可塑性ポリエステルです。熱可塑性プラスチックのポリウレタンの製造には、ポリカプロラクトンが広く使用されています。グリースやガソリン、溶剤に対してすぐれた耐性を示し、高い耐久性と硬度を持つのが特徴です。

複合物

これらの3種類の生分解性プラスチックは、それぞれ単独で使われる場合もあれば、ブレンドすることで単体では発揮できない機能を持たせる場合もあります。目的や用途によって材料を組み合わせたものを複合物と呼びます。

生分解性プラスチックの用途

現代社会においてプラスチックの使用量が増えるにつれて、その廃棄や回収が大きな課題となっています。農林水産業用資材や土木・建築資材といった、野外で継続的に設置・利用されるものについては、生分解性プラスチックの普及によって、廃棄物の削減につながると考えられています。また、食品包装用のフィルムや容器といった使用後の回収が困難なものについても、自然環境中に流出した場合でも、生分解性プラスチックであれば生物への影響を抑えられるのではないかと期待されています。

農林水産業用資材・土木・建築資材などの自然環境下で利用する製品

〇農林水産業用資材:マルチフィルム、移植用苗ポット、釣り糸、漁網
〇土木・建設資材:断熱材、山間や海中における回収困難な工事用の型枠・土留め
〇野外レジャー製品:ゴルフ、釣り、マリンスポーツ、登山などのディスポーザブル製品

農業用資材として使用される「マルチフィルム」は、回収・処理を作物の収穫後に行なわなければなりません。しかし、生分解性プラスチックを素材としたものを利用することで、その作業が不要になり、省力化や軽労化が期待されます。農林水産省生産局の資料(2019年)によると、普及率は6%程度にとどまっており、費用が割高であることや分解の時期が不安定であることが課題とされています。

食品トレイや衛生用品などの日常的に使用される製品

〇レジ袋、商品包装用のフィルムや容器、スプーン・フォーク、トレイ など
スーパーやコンビニで見かけるレジ袋やトレイ、ストロー、スプーン・フォークなどに、生分解性プラスチックが使用されていることがあります。

〇紙オムツや生理用品などの衛生用品
使用後の回収や再利用が困難な衛生用品の分野では、生分解性プラスチックの特性が活かされます。日々使用されるものなので、プラスチックごみの量を減らす取り組みとして期待されています。

特定の分野に特化した製品

医療用の縫合糸や高度な医療用具にも、生分解性プラスチックが活用されています。例えば、吸収糸と呼ばれる術後に体内に残ってしまうような使い方をするものはそのひとつで、腸管や腹膜を縫合する時に使われているようです。吸収糸の種類はさまざまで、10日程度で吸収するものから2か月程度かかるものまであります。

吸収糸がなぜ体内で分解されるかというと、ポリグリコール酸をはじめとした高分子生分解性熱可塑プラスチックが使われているからです。これは、水に触れると分子が分解する加水分解の性質を持っています。

まとめ

プラスチックは加工の容易さやコストの安さなどから、私たちの生活に欠かせない素材となっています。そのため、環境に配慮した新しいプラスチックが求められています。しかし、プラスチックごみ問題の解決には、これから出るプラスチックごみを減らす対策と、すでに存在するプラスチックごみを減らす対策の両方が不可欠です。

CCG HONANDOでは、プラスチック製品を使う時には環境にやさしい素材を選ぶとともに、紙で代用できる場合には紙を積極的に使っていく取り組みを始めています。ささいなご相談ごとから、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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