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2024.02.28 印刷について

日本が宣言したカーボンニュートラルとは?製造業における取り組み事例や「脱炭素」との違いを解説

日本が宣言したカーボンニュートラルとは?製造業における取り組み事例や「脱炭素」との違いを解説

2015年のCOP21で採択された「パリ協定」では、温室効果ガス削減に関する世界的な取り決めとして「2度目標(努力目標1.5度以内)」が掲げられています。各国の間で合意されたこの目標に向けて、日本でも2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す「2050年カーボンニュートラル宣言」が出されています。各企業がカーボンニュートラルの取り組みに本腰を入れ始めるなか、印刷会社を含む製造業においても同様の対応が求められています。今回はカーボンニュートラル関連の知識について解説しながら、製造業における取り組み事例を紹介します。

〈 INDEX 〉
そもそもカーボンニュートラルが必要な理由とは?
脱炭素とカーボンニュートラルの違いは?
カーボンニュートラルを宣言した国
2050年までにカーボンニュートラルを実現するための取り組み
カーボンニュートラルを宣言した日本の取り組み
製造業にカーボンニュートラルが求められる理由
製造業におけるカーボンニュートラルの取り組み事例
CCG HONANDOは自社工場においてカーボンニュートラルを実現
まとめ

そもそもカーボンニュートラルが必要な理由とは?

「カーボンニュートラル」とは、温室効果ガスの「排出量」から、植林などによる「吸収量」を差し引き、全体として実質ゼロにすることを意味する言葉です。このまま温室効果ガスの排出量が変わらなければ、各国が合意した削減目標の達成どころか、海面水位の上昇を招き、水不足や食糧不足といった問題を引き起こしかねません。さらに、私たちが快適な暮らしを送るために使われている化石燃料(石油や石炭、天然ガスなど)は有限であり、地球温暖化を悪化させる要因となる温室効果ガスを排出します。地球温暖化に歯止めをかけるために、経済活動や日々の生活で排出される温室効果ガスを削減し、カーボンニュートラルに貢献することが欠かせません。

脱炭素とカーボンニュートラルの違いは?

カーボンニュートラルと似た言葉に「脱炭素」があります。脱炭素とは、二酸化炭素の排出量をゼロにすることを目的としています。カーボンニュートラルが二酸化炭素以外のメタンやフロンガス、一酸化炭素を含む温室効果ガス全体を対象にしているのに対して、脱炭素は二酸化炭素に焦点を当てているのが違いです。またカーボンニュートラルは、植林や森林管理による吸収量を差し引いた「排出量の実質ゼロ」を目指しており、温室効果ガス自体の「排出量ゼロ」を目的としていない点も大きな違いです。

カーボンニュートラルを宣言した国

COP26が終了した2021年11月時点で、日本を含む154か国・1地域が2050年までのカーボンニュートラル実現を表明しています。表明したすべての国は、2030年の温室効果ガスの削減目標(NDC)を掲げており、「パリ協定」に基づき、5年ごとに温室効果ガスの排出削減目標を提出・更新する義務が設けられています。日本は、当初2013年度比で26%削減するという目標を掲げていましたが、「2050年カーボンニュートラル宣言」を踏まえて目標を更新し、2013年度比46%削減にまで引き上げ、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けるとの方針を示しています。

2050年までにカーボンニュートラルを実現するための取り組み

カーボンニュートラルの実現は、並大抵の努力で実現できるものではありません。そのためには、温暖化への対策を「経済成長の制約やコスト」と捉えるのではなく、「成長の機会」と捉えて、再生可能エネルギーの活用やビジネスモデルの変革などを加速させる必要があります。「経済と環境の好循環」をつくっていくために策定されたのが「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」です。今後成長が期待される14の重要分野について実行計画を策定するとともに、イノベーションを起こそうとする民間企業の挑戦を後押ししていくことを表明しています。

温室効果ガスの排出削減

脱炭素社会の実現に向けて、環境省は事業者に対して、温室効果ガスの排出を抑制する等の努力義務を果たす上でのガイドラインを示しています。事業活動においては、温室効果ガスの排出削減可能な設備の選択、使用に努めることとし、国民が日常生活で利用する製品やサービスについては、温室効果ガス排出量の少ないものを製造・提供するとともに、温室効果ガスの排出量について情報提供を行うよう求めています。

温室効果ガスの排出量の計測・検証

温室効果ガスの排出を抑制するためには、排出量を把握することが重要です。環境省では、温室効果ガス排出量の正しい算定の仕方や検証に関する理解促進と取り組み意欲を高めるために、DVD『よくわかる!GHG(温室効果ガス)排出量の算定・検証』の配布を行なっています。GHG排出量算定・検証の国際規格であるISO14064シリーズやISO14065を紹介しているため、まずはここから始めるのが良いでしょう。

再生可能エネルギーの導入

再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・地熱などを使用して発電するエネルギーのこと。自然由来のエネルギー源であるため枯渇せずに利用することができ、また発電時に温室効果ガスを排出しないことから、環境にやさしいエネルギー源として注目を集めています。しばしば日本のエネルギー自給率の低さが問題になりますが、再生可能エネルギーの普及・拡大は、エネルギー自給率向上にもつながると考えられています。

カーボンニュートラルを宣言した日本の取り組み

2050年カーボンニュートラルを実現するには、温室効果ガスを多く排出するエネルギー分野の取り組みが重要になります。電力部門においては、水素・アンモニアを使った発電やカーボンリサイクル、非電力部門においては脱炭素化された電力による電化をはじめ、水素化、メタネーション、合成燃料等を通じた脱炭素化の取り組みが行なわれています。こうした電源・燃料の転換を行なってもなお排出されるCO2については、植林やDACCS(Direct Air Carbon Capture and Storage:炭素直接空気回収・貯留)などを用いて、実質ゼロを実現していくこととしています。

地域脱酸素ロードマップ

「地域脱炭素ロードマップ」とは、2050年カーボンニュートラルを実現するために、具体的な取り組みを市町村レベルで取りまとめた行程表のことを指します。国の支援を受けた地方自治体や地元企業・金融機関が中心となり、少なくとも100か所の脱炭素先行地域で、地域特性等に応じて脱炭素に向かう先行的な取り組みを実行するとしています。

改正地球温暖化対策推進法

「地球温暖化対策推進法(温対法)」とは、国・地方自治体・企業・国民が一体となって温室効果ガスの削減に取り組むために、政府における基本方針の策定、地方自治体における実行計画の策定などを定めた法律です。2022年4月に改正地球温暖化対策法(改正温対法)が施行され、新たに「2050年までのカーボンニュートラルの実現」が法律に明記されました。さらに、地域における脱炭素化を促すために、実行計画に実施目標の追加を定めています。

カーボンリサイクル技術ロードマップの策定

日本は、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減すること、さらに、50%の高みに向けて挑戦を続けることを目指しています。その取り組みのなかで、注目されているのが「カーボンリサイクル」。これはCO2を資源として素材や燃料などに再利用することで、大気中へのCO2排出を抑えるという技術です。経済産業省は「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を策定し、カーボンリサイクル技術の拡大・普及の道筋を示しています。

グリーン成長戦略

「グリーン成長戦略」とは、「2050年カーボンニュートラル宣言」を受けて策定された産業政策のことで、「産業の成長と環境保護の両立」を目的に、産業政策とエネルギー政策の両面から、成長が期待される分野について実行計画を策定しています。「エネルギー関連産業」の4分野、「輸送・製造関連産業」の7分野、「家庭・オフィス関連産業」の3分野が重点分野として取り上げられており、特に政策効果が大きく、社会実装までを見据えて長期的な取り組みが必要な領域に対して、重点的に支援するとしています。

製造業にカーボンニュートラルが求められる理由

環境省が発表した「2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要」によると、産業部門のCO2排出量は多く、国内総排出量の3分の1を占めています。産業部門の大半は製造業であるため、製造業におけるカーボンニュートラルの取り組みは重要です。製造業は生産設備を稼働させるのに大量の電力を消費しています。カーボンニュートラルを実現するには、設備の省エネはもちろん、使用する電力を再生可能エネルギーにシフトすることが欠かせません。

製造業におけるカーボンニュートラルの取り組み事例

製造業におけるカーボンニュートラルの取り組みはいくつかありますが、エネルギーの無駄を減らすための生産計画、生産ラインの効率化、エネルギー効率の良い機械や断熱材の導入を通じてエネルギー使用量をできる限り抑えることが大切です。また、自社で再生可能エネルギーを生産する方法や、グリーン電力への置き換えなども検討したいところ。削減しきれない排出量は、他の地域や部門で排出削減や吸収などを行い、その削減分で自社の排出量を相殺する「カーボンオフセット」を利用するのもひとつです。環境にやさしい技術や、持続可能な製造プロセスの開発を行なう企業が増えています。

再生可能エネルギーの取り組み

近年、食品ロスをはじめとする食品廃棄物の増加が問題となっていますが、食品廃棄物を有効活用して再生可能エネルギーを創出する「食品リサイクル発電」という取り組みも見られます。これは、微生物の働きによって生成したバイオガスを燃料として再生可能エネルギーを発電し、固定価格買い取り制度(FIT)を活用して売電するというものです。この発電によって約3,000トンのCO2が削減されています。

自動車業界の取り組み

ある自動車メーカーでは、「カーボンニュートラル」「クリーンエネルギー」「リソースサーキュレーション」の3つの柱に取り組んでおり、2050年までに製品だけでなく企業活動を含めたライフサイクルを通じて「環境負荷ゼロ」の循環型社会の実現を目指しています。また、2040年までに EV(電気自動車)・FCV(燃料電池自動車)の販売比率をグローバルで100%にすることを目標に掲げて、CO2の削減に取り組んでいます。

建設業界の取り組み

建設現場では、建機などに使用される軽油などの燃焼からCO2が発生しています。ある大手ディベロッパーは、2040~2050年の目標のひとつに「脱炭素」を掲げ、「カーボンニュートラル」を経営の重点テーマに置いた取り組みを推進。新たな省エネ工法や燃費性能の優れた建設機械の開発・実用化を進めるとともに、軽油代替燃料の導入やICTを活用した省力化施工、ハイブリッド建機を導入することで、燃料の使用量を低減しています。

食品業界の取り組み

東証プライム上場の製パン企業は、水使用量の削減と排水の管理に取り組んでいます。工場における節水対策によって使用量の削減を図るとともに、水のカスケード利用(一度利用した水の再利用)を行うことで、水資源の効率的な利用を進めています。

CCG HONANDOは自社工場においてカーボンニュートラルを実現

印刷サービス企業として、社会を支える企業として、環境負荷低減はとても大切な使命。CCG HONANDOは自社工場においてカーボンニュートラルを実現しており、二酸化炭素排出量がゼロです。つまり、当工場で印刷する製品は、製造時点で発生するCO2がゼロになります。製造する印刷物にはカーボンゼロプリントマークを記載することが可能です。マークを記載することで、環境に配慮した企業としての信頼感を高めることができます。会社案内や商品紹介リーフレットなどに用いることで、企業イメージの向上につなげられるでしょう。ご興味のある方はお問い合わせください。

まとめ

今回は、カーボンニュートラル宣言や脱炭素との違いなど、カーボンニュートラル関連の知識について解説しながら、製造業における取り組み事例を紹介しました。近年、企業の脱炭素化に向けた取り組みが注目されています。印刷会社を含む製造業は、製造工程で排出されるCO2も多くなりがちです。CCG HONANDOは印刷サービス企業として、社会を支える企業としての役目を果たすために、環境負荷低減活動の一貫でカーボンニュートラル達成の取り組みを始めています。

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