2020.12.07
FSC®森林認証紙とは?注目される理由や利用するメリットを解説
印刷における環境負荷低減の取り組みやエコ用紙に関する話題に、必ず登場するといっても過言ではない「FSC®森林認証紙」。名前を耳にしたことはあるけれど詳しくは知らない…という方のために、今回のコラムではFSC®森林認証紙について詳しくご紹介。どのような用紙かということだけではなく、世界の森林資源の現状についても理解を深めていただけると思います。
〈 INDEX 〉再生紙とFSC®森林認証紙の違い
FSC®森林認証紙が環境保全に与える影響
FSC®森林認証紙を使用するメリット
FSC®森林認証の取得の流れ
FSC®森林認証のロゴマークを表記するには?
FSC®森林認証紙を使った製品
FSC®森林認証紙に関するQ&A
CCG HONANDOはFSC®森林認証紙や環境に配慮した用紙を採用しています
再生紙とFSC®森林認証紙の違い
一度使用された古紙を配合した紙のことを再生紙といいます。古紙の配合率が5%以上であれば再生紙と呼ばれ、70%以上であればエコマークを付けることができます。しかし、リサイクルを繰り返すことによって品質が劣化することや、製造過程で二酸化炭素を排出してしまうことなどが問題視されるようになってきました。
そこで注目されているのがFSC®森林認証紙です。FSC®ミックスラベルは、FSC®認証森林からの原材料及び規格に適合した管理木材やリサイクル材を使用している点が再生紙との大きな違いですが、主原料となる木材が適切に管理された森林で収穫されているという認証を受けていることから、環境に配慮した紙であるといえます。
FSC®とは「Forest Stewardship Council®: 森林管理協議会」の略称で、環境保全の面で適切かつ社会的な利益にかない、経済的に継続可能な責任ある森林管理を普及させるために設立された国際機関です。また、森林認証とは、「適切な森林管理」(“Well-Managed”)を世界統一の基準に沿って審査・認証する制度。世界的な森林の減少・劣化の問題や、グリーンコンシューマリズムの高まりを背景として生まれました。
FSC®森林認証紙が環境保全に与える影響
昨今、世界的に問題となっている森林減少。FSC®森林認証は、「森林の管理が環境や地域社会に配慮して適切に行なわれているかどうか」を評価・認証するものであるため、FSC®のロゴマークが付いた製品を選ぶことは、適切な森林管理を行なう林業者や地域を支援することにつながります。ひいては、世界全体の森林保全に貢献できるのです。
世界の森林資源の現状
世界にある森林は、今この瞬間も減少を続けています。世界の森林面積は約40億ヘクタールあり、地球上の陸地面積の約3割を占めていますが、2000年から2010 年までの10年間、年間1,300万ヘクタールもの森林が失われてしまったというデータがあります。年間1,600万ヘクタールの減少であった1990年代よりもその速度は遅くなっているものの、依然として広大な面積の森林が失われ続けています。
近年、世界で最も森林が減少しているのは、ブラジルやインドネシア、そしてアフリカの熱帯諸国です。南米、東南アジア、アフリカ地域の熱帯に位置する国々の多くは、熱帯気候と豊富な降水量により国土の大半が森林に覆われていましたが、20世紀に入って急速に森林が失われてきました。その原因は、プランテーションをはじめとする農地への土地利用の転換、自然回復力に配慮しない非伝統的な焼畑農業、燃料用木材の過剰な採取、森林火災など。また、違法伐採によって持続可能な森林経営がなされていないことも大きな要因となっており、伐採によって立木の密度が低下する森林劣化も深刻な問題となっています。
FSC®森林認証紙は環境負荷低減への第一歩
適切に管理されていると認められた森林から生産された木材や、その他適切な森林資源の使用につながる原材料を使用した製品には、FSC®のロゴマークが付けられます。認証された製品が市場に増え、それらの購入が進むことにより、適切に管理される森林が守られ、森林の破壊や劣化を招くことなく木材消費が進むというサステナブルな仕組みです。
消費者がFSC®のロゴマークが付いた製品を選ぶことは、前述の通り適切な森林管理を行なう林業者や地域の支援につながります。また、「地球環境を考えない違法伐採による木材製品は使いません」という意思表示にもなります。そうした側面からも、FSC®森林認証はSDGsをはじめとする環境負荷低減に取り組む多くの企業から注目されています。
FSC®森林認証制度の仕組み
FSC®森林認証制度では、責任ある森林管理のもとに生産される木材とその製品を識別・認証し、消費者に届けることで、適切な森林管理を行なっている林業者を支える仕組みを構築しています。1994年の設立以来、FSC®は多くの消費者や企業から支持を集め、世界で最も信頼度の高い森林認証制度として国際的に認知されています。
FSC®森林認証紙を使用するメリット
企業の社会的な責任が問われる今、FSC®森林認証紙を使用するメリットとして挙げられるのは、環境問題に真剣に取り組んでいる姿勢や取り組みをわかりやすく示せることです。さらには、森林保全の支援や地球環境の保全に貢献できることです。
FSC®森林認証の取得の流れ
FSC®森林認証制度には、「森林管理の認証(Forest Management:FM認証)」と、「加工・流通過程の管理の認証(Chain of Custody:CoC認証)」の2種類があります。世界的に統一された「10の原則と70の基準」に基づいて審査され、その原則と基準は、森林に関係する世界中のさまざまな人の声を集め、環境・社会・経済のバランスを考慮して策定されました。また、それぞれの原則と基準のもとに各国の状況に応じて設けられた細かい指標があり、審査によってすべての項目において大きな問題がないと確認された場合にのみ、認証が与えられます。
FM認証は、生物の多様性と、それに付随する価値、水資源、土壌、生態系、景観を保全し、適切な森林管理が行なわれていることを認証するものです。一方COC認証(Chain of Custody:管理の連鎖)は、FSC®が認証した林産物の製品を普及させるため、製造・加工・流通のすべての過程において、認証原材料や製品がそうでないものから分別され、識別されているか、使ってもよい原材料の種類や量が規定を満たしているか、適切な表示をつけて取引されているか、記録はきちんと残されているかなどといったことを認証するものです。認証材を使用した最終製品にFSC®マークを付けるためには、生産・流通・加工に関するすべての企業がCOC認証を取得する必要があります。
身の回りを注意深く見てみると、普段目にするさまざまな製品のパッケージにFSC®のロゴマークが付いていることがわかります。その製品を購入することが森林保全につながるため、FSC®のロゴマークの有無を、製品を選ぶ際の選択肢のひとつとしてみてください。
FSC®森林認証の「10の原則」とは?
FSC®森林認証を取得する際の審査基準となるのが、「10の原則と70の基準」です。合法性や労働者・先住民族の権利といった項目に分けられた原則には、それぞれ細かな基準が設けられ、それらを総じた「10の原則と70の基準」に基づいて審査されます。「10の原則」は下記の通りです。 【原則1:合法性】法律や国際的な取り決めを守っている 【原則2:労働者への権利】労働者の権利や安全が守られている 【原則3:先住民族の権利】先住民族の権利を尊重している 【原則4:地域社会との関係】地域社会の権利を守り、地域社会と良好な関係を保っている 【原則5:森林からの便益】森林のもたらす多様な恵みを大切に活かして使っている 【原則6:環境】環境を守り、悪影響を抑えている 【原則7:管理計画】森林管理を適切に計画している 【原則8:モニタリング】森の状態や管理状況を定期的にチェックしている 【原則9:高い保護価値】保護すべき価値のある森などを守っている 【原則10:管理活動の実施】管理活動を適切に実施している
<森林管理の認証
FSC®の認証木材は、FSC®が定める森林管理の規格を満たした認証林から生産されます。そうした森林が責任を持って適切に管理されているかを審査し、認証するのがFM認証(森林管理の認証:Forest Management)です。しかし、何をもって「責任ある森林管理」や「適切な森林管理」と言えるのかは少し気になるところかもしれません。
ここでは、その言葉の真意をもう少し具対的に説明します。「責任ある森林管理」や「適切な森林管理」という言葉は、FSC®の理念である「環境保全の点から見ても適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な森林管理」を意味したもので、認証規格を具現化したもの。FM認証の審査基準には10の原則と70の基準があることはお話ししましたが、その下にある各国の細かな指標は約200もあります。そうした厳正な原則と基準、指標をクリアしなければ、認証を受けられないのです。
加工・流通過程の管理の認証
2種類あるFSC®認証のうちのもうひとつが、CoC認証(加工・流通過程の管理の認証:Chain of Custody)です。こちらは、FM認証を受けた森林、またはFSC®管理木材や規格を満たした再生材が消費者の手に届くまでの加工・流通過程を認証するものです。原則として、認証林から生産された木材でも、小売を除いて生産・加工・流通に関わるすべての企業がCoC認証を取得していなければ、FSC®の認証製品として販売することはできません。
FSC®森林認証のロゴマークを表記するには?
FSC®森林認証のロゴマークは、「森林破壊や違法伐採等の環境・社会的な問題のリスクの低い原材料が責任を持って調達されている」ことを証明するものです。木材の伐採から製品に至るすべての工程(生産、流通、製造、管理)が、FSC®(CoC)認証を受けている企業によって取り扱われていることが、ロゴマークを表記するための条件となります。
オンプロダクト使用の場合
FSC®森林認証のロゴマーク使用方法には、「オンプロダクト(on-product)」使用と、「オフプロダクト(off-product)」使用の2種類があります。認証取得者によるオンプロダクト使用とは、FSC®森林認証ロゴマークが物理的に目に見える状態で、認証製品やパッケージなどに付けられたもので、焼印、タグ、シール、刻印、印刷、透かし印刷、レーザ彫などを含みます。 オンプロダクト使用が認められているのは、FM認証、CoC認証およびFM/CoC認証の取得者のみ。FSC®森林認証のロゴマークは、FSC®以外の森林認証制度と同時に使用することはできません。
オフプロダクト使用の場合
オフプロダクトにおけるFSC®森林認証のロゴマークの使用は、認証製品やそのパッケージに対してではありません。パンフレット、ポスター、カタログ、店頭のPOP広告、Webサイト、伝票類、名刺、封筒などを通じて、FSC®のプロモーションやFSC®認証製品、または認証を取得していることをPRすることを目的に、FSC®ロゴマークを使用することがこれにあたります。
オフプロダクト使用には、認証林や認証製品のプロモーション、販売促進、FSC®の一般的な説明なども含まれます。また、すべてのFSC®認証取得者および非認証取得者は、許可を得ることでFSC®ロゴマークのオフプロダクト使用が認められます。
FSC®森林認証紙を使った製品
FSC®森林認証紙を使った製品には、さまざまなものがあります。はがきや封筒、名刺にコピー用紙、伝票や帳票といったビジネスシーンでおなじみのアイテムはもちろん、ストローやトイレットペーパーなど、身近なところにFSC®森林認証紙を使ったアイテムがあります。そしてその種類は着実に増えています。環境に配慮した紙製品がさらに流通することで、FSC®森林認証紙に対する認知が高まっていくことが期待されます。
FSC®森林認証紙に関するQ&A
<世界の森林資源を守ることにつながるFSC®森林認証紙を、ぜひ積極的に活用したいものです。そこで、FSC®森林認証紙に関する疑問をまとめてみます。①FSC®のロゴマークを印刷物に使用したい場合はどうすればいい?
FSC®のロゴマークを印刷物に使用するには、林業者がFM認証を受けていることに加え、流通加工業者がCoC認証を受けている必要があります。印刷に使用する用紙をはじめ、流通や加工など各工程に関わる業者が認証を取得しなければなりません。CCG HONANDOでは、2009年5月にCoC認証を取得しました。
②FSCミックス認証紙との違いは?
FSC®森林認証のロゴマークには、「100%」「ミックス」「リサイクル」といった文字が入っていることがあります。このうち「ミックス」と書かれたFSCミックス認証紙は、FSC®の認証を受けた森林に由来する原材料のほか、FSC®の規格に適合した木材やリサイクル材を使用した製品です。
CCG HONANDOはFSC®森林認証紙や環境に配慮した用紙を採用しています
CCG HONANDOは印刷業を展開する企業です。印刷業はたくさんのエネルギーと資材を必要とする環境負荷の高いビジネスであるため、事業を通した環境負荷の低減は企業としての社会的責任だと考えています。そのため、印刷用紙の選択においては、FSC®森林認証紙をはじめ環境に配慮したエコでサステナブルな用紙の採用を積極的に推進。FSC®森林認証紙を採用することで、適切な森林管理を行なう林業者や地域を支援し、世界の森林保全に貢献しています。ただ印刷サービスを提供するのではなく、時代に即した取り組みを続け、世の中への新たな価値の提供を目指してまいります。
FSC®-C013974
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