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2021.02.03

「あじろ綴じ」とはどんな製本方法?綴じ方の特徴や冊子印刷時の注意点

「あじろ綴じ」とはどんな製本方法?綴じ方の特徴や冊子印刷時の注意点

これまでさまざまな製本方法をご紹介してきましたが、今回フォーカスするのは「あじろ綴じ」です。あまり聞き慣れない製本方法かもしれませんが、文庫本や月刊誌、カタログなどによく使われています。実は身近なところにあるあじろ綴じとはどんな製本方法なのか、その綴じ方の特徴や、よく似ている「無線綴じ」との違いとともに解説します。さらに、冊子印刷時に知っておくと便利なポイントもあわせてお伝えします。

〈 INDEX 〉
あじろ綴じと無線綴じの違いは?
あじろ綴じと無線綴じの選び方のポイント
あじろ綴じが向いている印刷物
無線綴じが向いている印刷物
あじろ綴じや無線綴じをする時のデザインの注意点
あじろ綴じに関するよくある疑問
品質管理にこだわるCCG HONANDOの管理体制

あじろ綴じと無線綴じの違いは?

あじろ綴じは無線綴じを改良した製本方法で、見た目には違いがありません。どちらも綴じる工程で針金や糸を使わず、背の部分を特殊な接着剤で固めます。そのため、中綴じに比べて丈夫で長持ちするのが特徴です。あじろ綴じは、製本工程において無線綴じと少しだけ異なる部分があります。

「あじろ綴じ」とはどんな製本方法?綴じ方の特徴や冊子印刷時の注意点

あじろ綴じとは?

あじろ綴じは、無線綴じとほぼ同じ製本方法ですが、製本工程の一部に違いがあります。あじろ綴じの場合、本文を折る過程で本の背になる部分にミシン目状のスリットを入れます。このスリットの大きさは、印刷加工先によって異なりますが、10~15mm程度のスリットを5mm程度の間隔で入れるのが一般的です。このスリットが「あじろ」と呼ばれるものです。あじろを入れることで接着剤が浸透しやすくなり、ページ同士がしっかりと固まってより丈夫な仕上がりになります。

しかし、あじろ綴じにはデメリットがあります。あじろ綴じはノド部分の接着剤の浸透量が多くなるため、ページがやや開きにくくなってしまうのです。見開きいっぱいに写真を使用したい場合や、図柄を多く配置したい場合には、あまり向かない製本方法です。

無線綴じとは?

無線綴じとは、本文の束(折丁)をページ順に重ねて背の部分に接着剤を塗布し、最後に表紙でくるむ製本方法です。線(針金や糸)を使わない製本方法であることから、無線綴じと呼ばれます。無線綴じは接着剤を使用して綴じるため、折丁に一定の厚みが必要です。また、針金で綴じる中綴じと比べて、耐久性が高いのが特徴です。このことから無線綴じは、教材や報告書、文庫や記念誌をはじめ、商業誌や書籍などに幅広く採用されている製本方法です。

無線綴じ(くるみ製本)とは?特徴や中綴じとの違い、メリット・デメリットを詳しく解説

冊子の製本方法には、「中綴じ」や「糸綴じ」などいくつもの綴じ方がありますが、今回は「無線綴じ(くるみ製本、くるみ綴じ)」をピックアップ。無線綴じは、文庫本や参考書、カタログといったさまざまな冊子に使用されている製本方法で、皆さんがお持ちの本をはじめ、書店でも見かけたことがあると思います。そんな無線綴じの特徴からメリット・デメリットまで詳しく解説します

あじろ綴じと無線綴じの選び方のポイント

次に、冊子印刷においてあじろ綴じと無線綴じのどちらを選ぶべきか、判断材料となるポイントをお伝えします。まずは、用紙の厚さを表す「連量(れんりょう)」に注目してください。「連」とは、一定のサイズの紙1,000枚(板紙の場合は100枚)を表す単位です。「連量」とは、この1連あたりの重量のことで、単位は「kg(キログラム)」を使用します。重ければ重いだけ「厚い」紙、軽ければ軽いだけ「薄い」紙、ということになります。

紙の連量が110kgを超えると、紙のコシが強くなりすぎてしまいます。そのため、本を開いた時に背面部の接着層に負荷がかかり、背割れが起きやすくなるのです。一度背割れが起きてしまうと、無線綴じの場合、1枚ずつ本文が抜け落ち始めてバラバラになってしまいます。しかし、あじろ綴じはページ同士が接着されてつながっているため、簡単にバラバラになることがありません。厚めの用紙を使用したい場合は、あじろ綴じが適しているといえます。

ちなみに、無線綴じの限界となる連量の目安は約110kgと考えておくとよいでしょう。また、135kgを超える厚紙を使用する場合は、あじろ綴じでもリスクが高くなるため、印刷会社と相談のうえ、状況によっては糸かがり綴じをする必要が出てきます。

「あじろ綴じ」とはどんな製本方法?綴じ方の特徴や冊子印刷時の注意点

糸かがり綴じとは?

糸かがり綴じとは、本の背の部分を糸で綴じる製本方法です。糸で綴じた後、接着剤で固めます。糸かがり綴じは上製本の本文に使用されている製本方法で、40ページを超える冊子に対応でき、製本強度が高く、大きく開いてもページが脱落しないことがメリットです。また、あじろ綴じや無線綴じに比べて接着剤の影響を受けにくく、見開きにわたる写真やイラストが多い場合はデザインを損なうことなく表現できます。しかし、糸かがり綴じは他の製本方法に比べて製本工程が多く、製作日数がかかることがデメリットです。

平綴じ(針金綴じ)とは?

平綴じ(針金綴じ)とは、重ねた用紙を針金で綴じる方法です。中綴じは背の中心部分を針金で留めるのに対して、平綴じは背の近くにある側面を留めるのが特徴です。また、針金が隠れるように表紙部分を巻き込むタイプと、針金が見えたままにする巻かないタイプの2種類があり、冊子の用途に合わせて選ぶことができます。

平綴じは丈夫なのがメリットである反面、針金で留めている構造上、センター部分いっぱいまで冊子を開くことができないのがデメリットです。そのため、用紙の印刷幅が5mm程度狭くなってしまいます。

あじろ綴じが向いている印刷物

あじろ綴じは、耐久性と保存性を求める冊子に適した製本方法です。皆さんになじみのあるものでは、文庫本やカタログ、月刊誌などによく採用されています。

「あじろ綴じ」とはどんな製本方法?綴じ方の特徴や冊子印刷時の注意点

コート紙を使う場合

上質紙や中質紙を使用する場合は、どんな綴じ方でも強度や耐久性に問題はありません。しかし、コート紙は上質紙や中質紙と比べて繊維分が少なく、無線綴じでカットされた断面をラフニング(折り丁の背を毛羽立たせる加工)すると、コート剤が粉末になってしまいます。そして、この粉末が用紙の断面に付着すると、接着において大きなデメリットが生じます。粉末をきれいに取り除かないまま接着剤を塗布すると、接着効果が損なわれてしまうのです。このようなことから、コート紙を無線綴じする場合は、安全性をしっかりと見込んで切れ目を入れるか、あじろ綴じを選択するのがおすすめです。

用紙の連量が110kgを超える場合

用紙の連量が110kgを超える場合、背面部の接着層に負荷がかかり、背割れのリスクが高まります。そのため、無線綴じではなくあじろ綴じを選ぶのが無難です。ちなみに、用紙の連量が110kgを超える用紙がどのくらいの厚さかというと、1万円札の厚さのコート紙をイメージしてみてください。また、連量が少ない用紙の場合、接着剤の浸透が不十分になる可能性があるため注意が必要です。

無線綴じが向いている印刷物

無線綴じは、あじろ綴じに比べると耐久性が劣りますが、中綴じよりも耐久性が高いのが特長です。そのため、商業誌やカタログ、書籍や文庫本、記念誌など、幅広い印刷物に採用されています。

「あじろ綴じ」とはどんな製本方法?綴じ方の特徴や冊子印刷時の注意点

折り数が多い場合

薄手の紙で折り数が多くなると、中折の浮きが出やすくなります。あじろ綴じの場合、この中折の浮きが生じたまま接着剤を押し込むと、内部まで浸透しないため紙抜けのリスクが急激に高まります。しかし、折丁の背の部分をまとめて接着剤で固める無線綴じなら、そうしたリスクは生じません。輪転機での印刷であれば、印刷の品質が大きく関係してくるため、事前の打ち合わせ段階でしっかりと把握しておきましょう。

用紙の連量が45kgを下回る場合

用紙の連量が45kgを下回る場合は、あじろ綴じよりも無線綴じがおすすめです。あじろ綴じは、連量が少ないと中折まで接着剤を押し込むのが難しくなり、接着剤が浸透しにくくなってしまうのです。

あじろ綴じや無線綴じをする時のデザインの注意点

あじろ綴じや無線綴じの印刷物をデザインする場合、下記の3点に注意が必要です。CCG HONANDOでは、データ入稿時に専門スタッフによるデータチェックを行ないますが、事前にご確認いただくと進行がスムーズです。

①表紙のデザイン設計
②ノド側のレイアウト
③断ち落としのデザイン

「あじろ綴じ」とはどんな製本方法?綴じ方の特徴や冊子印刷時の注意点

注意点①:表紙のデザインは背の幅を考慮する

あじろ綴じや無線綴じの場合、本文を表紙でくるんで製本するため、本文の厚みの分だけ背ができます。この背の幅を考慮して、表紙をデザインしなければなりません。背の幅は本文のページ数によって変わり、〈用紙の厚さ×ページ数÷2〉で計算できます。

例えば、本文が上質紙70kg/80ページの冊子の場合、1枚の厚さが約0.1mmなので、〈0.1×80÷2=4mm〉となります。また、製本時に多少のズレが発生するため、背の部分と表紙・裏表紙がはっきり分かれるデザインは避けたほうがよいでしょう。

注意点②:ノド側の文字や写真が見えなくならないレイアウトにする

あじろ綴じと無線綴じは、本の背になる部分に接着剤を塗布するという製本の仕組み上、ページの開きがあまりよくありません。そのため、ノド側(センター部)の近くに文字や写真があると読みづらくなってしまいます。見開きの写真が入っている場合も同様に見えづらくなりますので、配置には十分な配慮が必要です。読みやすさを考えると、ノド側の余白は10mm以上持たせておくのがおすすめです。

注意点③:断ち落としまでデザインが入っている場合、製本時のズレに注意する

本を開いた時の外側のことを小口と呼び、製本した時の断裁面になる部分です。小口側の断ち落としにまでデザインが入っていると、製本時にズレが生じてしまい、きれいに揃いません。

あじろ綴じに関するよくある疑問

ここでは、あじろ綴じに関する質問のなかで、特に多く寄せられるものを2つピックアップしました。冊子の製本方法としてあじろ綴じを選択する時の参考にしてください。

「あじろ綴じ」とはどんな製本方法?綴じ方の特徴や冊子印刷時の注意点

【よくある疑問①】あじろ綴じと無線綴じ、価格が安いのはどちらですか?

あじろ綴じと無線綴じでは、料金に差はありません。また、あじろ綴じ・無線綴じと中綴じを比較した場合、背表紙のあるしっかりとした仕上がりになるあじろ綴じ・無線綴じのほうが、中綴じよりもコストはやや高くなります。その要因は、製本工程が複雑になることと強度が増すことです。ただ、そこまで大きな差はないため、冊子の仕様や用紙も含めて印刷会社と相談し、最適な製本方法を検討するとよいでしょう。

【よくある疑問②】あじろ綴じと無線綴じの見分け方はありますか?

あじろ綴じと無線綴じは、同じ製本方法として分類されることがあります。違いを挙げるとすれば、接着剤を塗布する背の部分に切れ目を入れ、そこから接着剤を浸透させることです。使用感としては、あじろ綴じは無線綴じよりも丈夫で長持ちし、無線綴じよりも開きやすい、という特徴があります。

品質管理にこだわるCCG HONANDOの管理体制

CCG HONANDOでは、自社工場内で製本工程を全て管理し、万全の体制で製造しています。乱丁・落丁による不良を回避すべく、インラインカメラをはじめ、厚み検知機、員数機、混入防止のためカッターやハサミなどの刃物管理を徹底。ミス防止のための作業手順においても、これまで培ってきた知見を生かしながら日々改善し、お客様にご満足していただける品質の印刷物をご提供しています。あじろ綴じをはじめ、お客様のご要望に合わせて最適な製本方法をご提案いたしますので、気軽にお問い合わせください。

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